最初にお断りします。当サイトは虫の同定をしていません。
顕微鏡も標本も持っていませんし、シロアリの駆除もしたことがありません。ですから「これはシロアリです」と判定することはできません。書けるのは、協会と行政が公表している見分け方を、1件ずつ突き合わせた結果だけです。すべて出典を付けるので、同じ手順で確かめられます。
この記事の末尾には広告リンクがあります(シロアリ110番)。 当サイトは提携している会社とサービスだけ広告を載せ、載せた場合は必ず明記します。提携の有無で、調べる項目も書く内容も変えていません。
確認日:2026年9月20日
確認できたこと
- 協会と自治体の資料11件で、羽アリの見分け方を1件ずつ突き合わせました。 3点すべてがそろって一致したのは、翅の1点だけです
- 翅は11件すべてが一致しました。いずれも「4枚とも同じ大きさ(または同じ形)」と書いていて、食い違いがありません
- 触角に触れていない資料が1件あります(名古屋市)。胴のくびれに触れていない資料も1件あります(横浜市衛生研究所)
- 胴のくびれは9件が「くびれはない」。ところが大阪市西区だけ、「ずん胴でくびれがわずか」と書いています
- クロアリ側の触角の形容が割れます。 「く」の字が6件に対し、大阪市西区だけがL字型
- 飛ぶ日の風が正反対でした。 東京都は「晴れた風のある日」、名古屋市は「昼間の無風高温の日」
- 「雨上がり」は5件で一致しています(東京都・荒川区・山梨県・長野県・北海道立林産試験場)
- 本州の「4〜5月」は全国共通ではありません。 札幌市は6〜7月、北海道立林産試験場は5月末から6月と書いています
- 羽アリが出たら手遅れだと書いた公的資料は、確認できませんでした
- 殺虫剤の扱いが、区によって違います。 世田谷区は「かければ駆除できます」、大阪市西区は「駆除しても内部には数万単位の働きアリや兵隊アリが残っています」
- 90自治体のうち、シロアリ・羽アリの案内ページを見つけられたのは26件でした。東京都は、シロアリは衛生害虫ではないと明記しています
- お宅から羽アリが飛んでいる、と言って訪ねる手口が、2つの市の相談事例に載っています(いずれも約50万円)
- 国民生活センターに「シロアリ駆除」という相談区分はありません
3点のうち、そろったのは1点だけでした
羽アリの見分け方を書いている公的な資料を11件集めて、並べました。公益社団法人日本しろあり対策協会と、10の自治体です。
よく言われる見分け方は「触角」「翅」「胴のくびれ」の3点です。ところが11件を突き合わせると、3点がきれいにそろっているわけではありませんでした。
| 見るところ | 11件のうち書いている数 | 中身 |
|---|---|---|
| 翅 | 11件 | 全件が「4枚とも同じ大きさ(または同じ形)」で一致 |
| 触角 | 10件 | シロアリ側は「数珠状」で一致。アリ側が「く」の字とL字に割れる |
| 胴のくびれ | 10件 | 9件が「くびれはない」。1件が「くびれがわずか」 |
表は横にスクロールできます。
11件すべてが同じことを書いていたのは、翅の1点だけです。
触角は名古屋市が触れていません。胴のくびれは横浜市衛生研究所が触れていません。そしてその2か所は、内容そのものも資料によって書き方が違います。
急いでいる方のために先に書きます。手元の虫を見るなら、まず翅を見てください。 ここだけは11件が同じことを書いています。
1. 翅 ── 11件が一致した唯一の点
公益社団法人日本しろあり対策協会は、こう書いています。
アリの翅は前翅が後翅より大きいのに対して、シロアリの翅は4枚ともほぼ同じ大きさ・同じ形をしています。
横須賀市は、協会からの引用であることを明記したうえで同じ文を載せています(更新日 2026年5月13日)。ページには「(引用:公益社団法人日本しろあり対策協会HP「シロアリQ&A」)」と書かれています。
他の自治体も、言い方は違いますが中身は同じです。
- 世田谷区(表)── 羽:シロアリ「4枚とも同じ大きさ」/アリ「前羽が後羽より大きい」
- 板橋区(表)── 羽:シロアリ「前羽(2枚)と後羽(2枚)の大きさが同じ」/アリ「前羽(2枚)が大きく後羽(2枚)が小さい」
- 大阪市西区(表)── 羽の形:シロアリ「4枚とも同じ形」/普通のアリ(クロアリ)「前の羽が後ろより大きい」
- 名古屋市 ──「シロアリ類の翅は前翅と後翅の形や大きさがほとんど同じであるのに対し、アリ類の翅は前翅と後翅の大きさが異なる(後翅が明らかに小さい)」
- 山梨県(表)──「翅の大きさ 4枚とも同じ長さ」
見るときの手順を、いちばん具体的に書いているのは横浜市衛生研究所です。
前の羽(頭に近い側)の大きさと,後ろの羽(お腹に近い側)の大きさを比べてください
── 横浜市衛生研究所「洗面所に羽のある虫がたくさん出現!!(シロアリ)」(最終更新日 2026年4月1日)
そして判定まで書いています。
羽が4枚あって,大きさが全く同じ、触角がじゅず状であれば、まずシロアリを疑ってください
一方、豊島区が書いていた次の一文も分かりやすいものでした。
シロアリの羽アリはトンボのように羽が4枚同じ大きさです。折りたたんでいるときは、一枚に見えるかもしれません。アリの羽アリは後ろ2枚が小さいので区別できます。
ただしこのページは現在、削除されています。 2026年9月20日に確認したところ、豊島区の該当URLは「ご指定のページは見つかりませんでした」を返し、「くらしの中の虫」の一覧にもシロアリの項目はありません。ここでは、そういうページが以前あったという記録として書いておきます。現在の区の見解として扱わないでください。
翅が落ちている場合
国立環境研究所の侵入生物データベースは、イエシロアリの繁殖期をこう書いています。
6~7月に有翅虫による群飛行動が見られる.有翅虫は,巣から飛び立ち地上で翅を落として交尾を行ない,新しい巣を作る.
翅は落ちます。床に翅だけが散っている状態もありえます。 その場合、4枚の大きさを比べる方法は使えます(落ちた翅を並べればよい)が、触角と胴は残った本体を探さないと見られません。
2. 触角 ── シロアリ側は一致、アリ側が割れる
シロアリの触角については、10件が同じことを書いています。言い方だけが分かれています。
| 資料 | シロアリの触角の書き方 |
|---|---|
| 日本しろあり対策協会 | 真珠のネックレスのように数珠状をしています。 |
| 横須賀市 | (協会と同文) |
| 山梨県 | 触角 数珠(じゅず)に似ている |
| 長野県林業総合センター | 触角が珠数状である |
| 横浜市衛生研究所 | 触角がじゅず状 |
| 世田谷区 | じゅず状(虫眼鏡で観察) |
| 大阪市西区 | じゅず状 |
| 大阪市大正区 | 触覚は数珠状で真っ直ぐ |
| 荒川区 | 数珠状の触覚 |
| 板橋区 | 数珠状 |
表は横にスクロールできます。
「数珠状」「じゅず状」「珠数状」と表記は揺れますが、指している形は同じです。なお大阪市大正区と荒川区は「触角」ではなく「触覚」と書いています(原文のまま引用しています)。
割れているのは、比較対象であるアリのほうです。
- 「く」の字状 ── 日本しろあり対策協会、横須賀市
- 「く」の字形 ── 板橋区
- 「く」の字型 ── 大阪市大正区
- くの字形 ── 世田谷区
- くの字状 ── 荒川区
- L字型 ── 大阪市西区
大阪市西区の比較表だけが「L字型」です。「く」の字とL字は、実際には同じ「途中で折れ曲がっている」形を指していると読めますが、初めて虫を見る人が、手元の触角を「く」の字と呼ぶかL字と呼ぶかは、その人次第です。ここを判定の決め手にするのは危ういと思います。
そして名古屋市は、触角にまったく触れていません。 ページ全体を探しても「触角」「触覚」のどちらも出てきません。名古屋市が挙げているのは翅と、胸部・腹部のくびれの2点だけです。
肉眼では見えないかもしれません
世田谷区だけが、表の中に見方を書き添えています。
触角:シロアリ じゅず状(虫眼鏡で観察)
── 世田谷区「シロアリについて」(最終更新日 2019年7月1日)
ヤマトシロアリの羽アリの体長について、さいたま市はこう書いています。
体長は4.5から7.5ミリメートル。頭部は黒褐色。翅は暗褐色。
── さいたま市「サイエンスなび 建材を食べる害虫『ヤマトシロアリ』」(更新日付 2021年1月19日)
体長5〜7ミリの虫の触角の節の形を、肉眼で見分けられるかどうか。世田谷区の「虫眼鏡で観察」という注記は、11件のなかでいちばん親切だと思いました。
3. 胴のくびれ ── ここが割れています
9件は「くびれはない」と書いています。
アリは腰の部分が細くくびれていますが、シロアリはくびれはなく寸胴です。
── 横須賀市「シロアリの確認について」(日本しろあり対策協会からの引用と明記)
- 世田谷区(表)── 胴:シロアリ「ずん胴」/アリ「くびれている」
- 板橋区(表)── 胴:シロアリ「ずん胴」/アリ「くびれている」
- 山梨県(表)──「胸部と腹部のあいだ ずんどう(くびれない)」
- 大阪市大正区 ──「体が寸胴でくびれがない。」
- 荒川区 ──「ずん胴の体」
- 名古屋市 ──「シロアリ類は胸部と腹部の間がはっきりしないのに対し、アリ類は胸部と腹部の間が明らかにくびれている」
- 長野県林業総合センター ──「シロアリは胸と腹との間にくびれがなくてずんどうです。」
1件だけ、違うことを書いています。
胴体の形 シロアリ:ずん胴でくびれがわずか/普通のアリ(クロアリ):くびれが明確
── 大阪市西区「シロアリにご用心!」(2020年1月28日)
「くびれはない」と「くびれがわずか」は、違うことを言っています。 前者なら、少しでもくびれていればシロアリではない、と読めます。後者なら、少しくびれていてもシロアリでありうる、と読めます。手元の虫がどちらか微妙だったとき、この差で結論が変わります。
そして横浜市衛生研究所は、胴のくびれを判定基準に入れていません。 ページ本文を通して「くびれ」「胴」「腰」「ずん胴」「寸胴」のいずれの語も出てきません。同研究所が挙げているのは、羽の枚数、羽の大きさ、触角の形の3点です。
当サイトの読み方を書きます。胴のくびれは、11件のなかで最も書き方が安定していない項目です。 判定の決め手にはせず、翅で判断したほうが確実だと考えます。
4. 「白くないからシロアリではない」は違います
複数の自治体が、同じ注意を書いています。
シロアリは、一般的に白いアリだと思われがちですが、白いのは働きアリと兵隊アリで、羽アリは黒っぽい色をしています。
── 大阪市西区「シロアリにご用心!」
働きアリと兵アリの体は白色ですが、羽アリは黒色です。
── 札幌市「シロアリ(ヤマトシロアリ)」(更新日 2022年12月26日)
長野県林業総合センターは体色を「黒褐色」、さいたま市は「頭部は黒褐色。翅は暗褐色。」と書いています。
黒い羽アリを見て「白くないからシロアリではない」と判断するのは、資料に照らすと誤りです。
5. 飛ぶ時期 ── 種類と地域で変わります
公益社団法人日本しろあり対策協会は、群飛の意味をこう書いています。
羽アリの群飛期はシロアリが人前に姿を現す唯一の時期ですので、シロアリ発見の絶好のチャンスです。群飛の時期や時刻に注意していれば、シロアリの種類の判別にも役立ちます。
同協会が挙げている時期と時刻です。
| 種類 | 協会の記述 |
|---|---|
| ヤマトシロアリ | 4~5月(ただし沖縄2月、東北・北海道6月頃)の昼間です。 |
| イエシロアリ | 6~7月の夜に群飛して電灯に飛来します。 |
| アメリカカンザイシロアリ | 6~9月の昼間に数回ずつ何度も群飛します。 |
| ダイコクシロアリ | 5~8月の夜に少数ずつ群飛して電灯に集まってきます。 |
表は横にスクロールできます。
東京都保健医療局も、同じ3種について書いています(更新日 2026年9月10日)。
(ヤマトシロアリ)主に4~5月の雨上がりで、晴れた風のある日の昼間に飛翔します。
(イエシロアリ)主に6月~7月頃の夕方に多く、夜間にも飛翔することがあります。
(アメリカカンザイシロアリ)主に6~9月の日中に飛翔します。
時期については、資料の食い違いがほとんどありません。 ヤマトシロアリは4〜5月の昼、イエシロアリは6〜7月の夕方から夜、アメリカカンザイシロアリは6〜9月の昼。荒川区(更新日 2026年2月27日)もこの3種を同じ区分で書いています。
ただしイエシロアリの時刻だけは、協会が「夜」、東京都が「夕方に多く」、横須賀市が「夕方から夜にかけて」、名古屋市と堺市が「夕方」、板橋区が「夕刻」と、少しずつずれています。
「4〜5月」は全国共通ではありません
協会が括弧で書いている「ただし沖縄2月、東北・北海道6月頃」が効いてきます。札幌市の記述です。
6~7月、湿度が高く蒸し暑い日に、加害材からたくさんの羽アリが飛び出し、シロアリの存在に気づくことが多いようです。
── 札幌市「シロアリ(ヤマトシロアリ)」
北海道立林産試験場は、もう少し細かく書いています。
北海道では,シロアリの羽蟻の発生(群飛)は一般的に5月末頃から6月にかけて,特に雨上がりの温暖な午前中に見られます。
── 森 満範「道北地域におけるシロアリの生息状況 ―シロアリの生態と生息環境―」『林産試だより』2003年4月号(北海道立林産試験場)
本州で「4〜5月」とされる群飛が、北海道では1〜2か月遅れます。 6月に羽アリを見た札幌の人が「シロアリは4〜5月だから違う」と判断すると、外れます。
なお、北海道が無関係でないことについては、国立研究開発法人森林総合研究所の報告があります。
ヤマトシロアリの野外分布北限は2001年の段階では図1のように札幌市付近が北限でしたが、今回、野外生息域と被害情報を改めて精査した結果、図2のように北海道北部(名寄市)まで生息地を拡げている状況を明らかにしました(図3)。
── 大村和香子、神原広平、加藤英雄「変わりゆくシロアリ生息地と寒冷地におけるシロアリ対策の必要性」『森林総合研究所 平成28年版 研究成果選集』p.24-25
6. 飛ぶ日の天気 ── ここが正反対でした
時期より、天気のほうが資料の食い違いが大きい項目です。
「雨上がり」については、5件が一致しています。
- 東京都 ──「主に4~5月の雨上がりで、晴れた風のある日の昼間に飛翔します。」
- 荒川区 ──「4~5月の昼間(雨上がりの晴れた日)に巣から飛び立ちます」
- 山梨県 ──「ヤマトシロアリ : 4月から5月の雨上がりで暖かい日の正午頃」
- 長野県林業総合センター ──「この羽アリは体長4.5~7.5mmで黒褐色をしており、ヤマトシロアリの場合、4~5月頃の雨上がりの暖かい晴天日の午前10~12時頃、群飛して新しい群体を形成します。」
- 北海道立林産試験場 ──「特に雨上がりの温暖な午前中に見られます。」
ところが、風については正反対のことが書かれています。
主に4~5月の雨上がりで、晴れた風のある日の昼間に飛翔します。
── 東京都保健医療局(更新日 2026年9月10日)
羽アリは4-5月頃出現する。昼間の無風高温の日に多い。
── 名古屋市「シロアリ類」(web昆虫図鑑)(更新日 2025年10月17日)
東京都は「風のある日」、名古屋市は「無風」の日。どちらも自治体の公式ページで、どちらも現行のものです(2026年9月20日に両方のページを開いて確認しました)。
この食い違いの理由は、当サイトでは確認できませんでした。 地域差なのか、参照した元資料が違うのか、どちらかが誤記なのか、公表資料からは判断できません。ですから、風の有無を判定に使うのはどちらの向きでもやめたほうがよいと考えます。「風が吹いているからシロアリだ」も「無風だからシロアリだ」も、根拠にできません。
なお湿度・気温についても書き方が分かれます。札幌市は「湿度が高く蒸し暑い日」、大阪市港区は「4月~7月頃の蒸し暑い日の夕方頃から」、名古屋市は「高温の日」、長野県は「暖かい晴天日」です。「気温◯℃以上で飛ぶ」といった数値の条件を書いた公的資料は、探した範囲では見つかりませんでした。
7. 「羽アリが出たら、もう手遅れ」は確認できませんでした
羽アリを見つけた人が最も不安になるのは、この点だと思います。「羽アリが出た時点で被害はかなり進行している」と明記した公的機関・研究機関の資料を探しましたが、見つけられませんでした。
近いことを書いているのは、次の2件です。
4月~7月頃、新たな巣をつくるために、いっせいに巣から羽アリが飛び出して、初めてシロアリの被害に気づくことがあります。
── 大阪市西区「シロアリにご用心!」
4月から5月の昼頃、羽アリがいっせいに外に飛び出す群飛が見られ、被害に気付くことがあります。
── さいたま市「サイエンスなび」
どちらも書いているのは「羽アリで初めて気づくことがある」までです。「気づいた時点で手遅れ」とは、どちらも書いていません。 この2つは別のことです。
被害の進行度については、長野県林業総合センターが別の見方を書いています。
被害が進行すると、表面を強く押すとへこんだり、たたくと空洞音がします。
── 長野県林業総合センター「ヤマトシロアリの生態と防除について」技術情報No.55(1984年/林産部 奥村)
ただしこの資料は1984年(昭和59年)のもので、現在の県の見解として書かれたものではありません。引用にあたって注記しておきます。
東京都は、被害の広がり方についてこう書いています。
気づかないうちに壁の内部や屋根裏など建物全体に広がり、深刻な被害を与えることがあります。
── 東京都保健医療局「シロアリ」
8. 目の前の羽アリに、殺虫剤をかけてよいか
ここは、2つの自治体が違う書き方をしています。
羽アリは市販のスプレー式殺虫剤をかければ駆除できます。木材内部に生息するシロアリの駆除は専門業者に依頼して下さい。
── 世田谷区「シロアリについて」(最終更新日 2019年7月1日)
羽アリだけを市販の殺虫剤で駆除しても内部には数万単位の働きアリや兵隊アリが残っていますので、十分な知識や機材等を持った専門業者に依頼することをお勧めします。
── 大阪市西区「シロアリにご用心!」(2020年1月28日)
正確に読むと、この2件は矛盾していません。 どちらも「本体の駆除は業者に」と言っています。違うのは、目の前の羽アリにスプレーをかけること自体をどう位置づけるかです。世田谷区は「それで羽アリは駆除できる」と書き、大阪市西区は「それをしても中に数万匹残る」と書いています。
ただし、羽アリにスプレーをかける前に考えたほうがよいことがあります。 横浜市衛生研究所は、判定が難しいときの手順をこう書いています。
疑わしい時は、近くの福祉保健センターに虫を持って行き、相談してください。
虫を殺虫剤で潰してしまうと、持って行って見てもらうことができなくなります。 同定してもらう可能性を残すなら、数匹を容器に取っておく、あるいは写真を撮っておくほうが手順としては合理的だと思います。これは資料に書いてあることではなく、上の2件を並べたうえでの当サイトの読み方です。
9. 自治体は、羽アリの相談に乗ってくれるのか
結論から言うと、ほとんどの自治体はシロアリの案内ページ自体を持っていません。
47都道府県・20政令指定都市・東京23区の計90自治体を検索で当たり、シロアリまたは羽アリの案内ページを見つけられたのは26件でした。うち22件は実際にページを開いて中身を確認しています(残り4件は、ページの存在は確認できたものの、サーバー側の応答やリンク切れで本文を読めませんでした)。
| 区分 | 調べた数 | 案内ページを見つけられた数 |
|---|---|---|
| 都道府県 | 47 | 10 |
| 政令指定都市 | 20 | 8 |
| 東京23区 | 23 | 8 |
| 合計 | 90 | 26 |
表は横にスクロールできます。
各自治体のサイト内検索は使っていないので、検索に出てこない階層のページは取りこぼしている可能性があります。 この数字は「見つけられた数」であって「存在する数」ではありません。
理由は、東京都が書いています
なぜネズミやハチに比べてシロアリの案内が少ないのか。東京都保健医療局が明文化しています。
シロアリは、家屋・家具等の木材を食害する経済害虫です。感染症の媒介や健康被害等をもたらす衛生害虫ではありません。
── 東京都保健医療局「シロアリ」
シロアリは、行政の「衛生害虫」の枠に入っていません。 保健所が扱う対象から外れる、という整理です。
大阪市は、市としての立場をはっきり書いています。
大阪市ではシロアリ(害虫)について相談には応じていますが、駆除等は行っていません。
── 大阪市港区「シロアリについて」(更新日 2024年4月1日)
大阪市大正区は、さらに明快です(2026年3月30日)。
※区役所では専門駆除業者の団体の連絡先を案内しています。
【区役所ではシロアリの駆除は行っておりません。】
ただし、相談だけなら受けている自治体があります
「駆除はしない」と「相談も受けない」は違います。 調べた26件のなかには、次のように書いている自治体がありました。
- 横浜市衛生研究所 ──「疑わしい時は、近くの福祉保健センターに虫を持って行き、相談してください。」/「シロアリの駆除は、一般の人ではできません。福祉保健センターに相談のうえ、専門の業者に駆除を依頼してください。」
- 荒川区 ──「保健所ではシロアリ対策業者の団体をご紹介しています。」/「シロアリの調査や駆除等については、専門業者に依頼して行ってください。」
- 大阪市港区 ──「相談には応じていますが、駆除等は行っていません。」
団体名まで載せている自治体もあります。
| 自治体 | 掲載されている団体 |
|---|---|
| 世田谷区 | 一般社団法人 関東しろあり対策協会/公益社団法人 東京都ペストコントロール協会/世田谷害虫防除協同組合 |
| 板橋区 | 一般社団法人関東しろあり対策協会/公益社団法人東京都ペストコントロール協会/公益社団法人日本しろあり対策協会 |
| 中野区 | 一般社団法人関東しろあり対策協会/一般社団法人日本ホウ酸処理協会 |
表は横にスクロールできます。
中野区は、相談会も開いています。
※区では、令和8年5月20日(水曜)に上記2協会の協力による無料相談会を実施しました。
── 中野区「シロアリについて」(更新日 2026年6月22日)
これはすでに終わった相談会です(2026年5月20日は水曜日でした)。ただし、こうした場を設けている区があること自体は、覚えておく価値があると思います。
中野区はもう1点、他にない注意を書いています。
外来種である「アメリカカンザイシロアリ」には対応していない業者もあります
種類によっては、業者を選ぶ段階で確認が要るということです。
10. 羽アリを口実にした訪問が、実際にあります
ここは、羽アリを見つけた人にいちばん直接関わる話です。
兵庫県の洲本市消費生活センターが公表している相談事例です(更新日 2019年6月17日)。
「お宅から羽アリが飛んできているとクレームが出ているので点検に来た」と業者が来訪。しつこく何度もシロアリ駆除を勧められ、怖いので帰ってもらうため契約した。作業前に代金を支払うよう言われ現金で約50万円支払った。(70歳代 女性)
栃木県の那須塩原市消費生活センターも、ほぼ同じ文面の事例を公表しています(更新日 2021年11月30日)。
「お宅から羽アリが飛んでいるとクレームが出ているので、点検に来た」と業者が来訪してきた。何度もしつこくシロアリ駆除を勧められ、帰ってもらうために契約した。作業前に代金を支払うよう言われ、現金で約50万円支払った。
正直に書いておきます。この2件はほぼ同一の文面で、どちらのページにも出典の記載がありません。 洲本市のページには国民生活センター発行の「見守り新鮮情報」へのリンクが並んでいますが、事例そのものの出典としては明示されていません。同じ原稿が2つの市に配信されたものである可能性が高く、独立した2件の相談とは言い切れません。
それでも載せる理由は、「あなたの家から羽アリが飛んでいるとクレームが来ている」という切り出し方が、自治体が注意喚起するに足る類型として認識されていることが分かるからです。
洲本市が添えている助言です。
★無料で点検させてほしいと訪問してくる事業者には対応しないようにしましょう。
行政処分の資料には「羽アリ」は出てきません
東京都は2021年10月26日、シロアリの無料点検を口実にした訪問販売業者に6か月の業務停止命令を出しています。勧誘文言が公表されています。
「シロアリの無料点検に伺います。」
「床下の梁や土台を支える柱がひび割れしている。このまま放置しておくと、大きな地震でもあれば倒れたりする危険性があります。」
「今であれば、私が言った値段でできます。今、決められた方がいいです。」
── 東京都「「シロアリの無料点検に伺います」などと無料点検を口実に訪問し、リフォーム工事を勧誘する事業者に6か月の業務停止命令」
この公表資料には「羽アリ」という語は一度も出てきません。 入口は一貫して「シロアリの無料点検」です。ですから、羽アリを口実にした勧誘で行政処分が出た、と当サイトが書くことはできません。 確認できたのは、上の2市が公表した相談事例までです。この違いは書き分けておきます。
件数の統計は、シロアリ単独では取れません
国民生活センターが公表している「点検商法」の相談件数です(更新日 2026年7月31日)。
| 年度 | 点検商法 | 訪問販売によるリフォーム工事 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 12,550件 | 11,879件 |
| 2024年度 | 19,249件 | 9,839件 |
| 2025年度 | 19,696件 | 5,544件 |
表は横にスクロールできます。
相談件数は2026年5月31日現在(消費生活センター等からの経由相談は含まれていません)
ここに「シロアリ駆除」という独立した相談区分はありません。 同ページの「リフォーム工事」は「屋根工事」「壁工事」「増改築工事」「塗装工事」「内装工事」の合計と定義されており、シロアリ駆除は含まれていません。したがって「シロアリ駆除の相談が年間◯件」という数字を、この資料から引くことはできません。
11. 確認できなかったこと
正直に並べます。
- 「羽アリが出たら被害は進行している」と明記した公的機関・研究機関の資料は見つけられませんでした。
- 群飛の数値条件(気温◯℃以上、湿度◯%以上など)を書いた公的資料は見つけられませんでした。
- 東京都の「風のある日」と名古屋市の「無風」の食い違いの理由は分かりませんでした。
- 羽アリを口実にした勧誘で行政処分が出た事例は確認できませんでした(確認できたのは市の相談事例まで)。
- シロアリ駆除に限った相談件数の統計は見つけられませんでした。
- 日本のシロアリの種数は、協会が22種、大阪市西区が「約20種類」と書いており、学名つきの確定リストを載せた公的資料は見つけられませんでした。
- 90自治体の調査は検索経由です。サイト内検索は使っていないので、取りこぼしがある可能性があります。
まとめ
- 翅を見てください。 4枚が同じ大きさならシロアリを疑う。11件の資料が一致している唯一の点です。
- 触角は虫眼鏡が要ります。 数珠状(じゅず状)ならシロアリ。ただしアリ側の形容は「く」の字とL字に割れています。
- 胴のくびれは決め手にしないでください。 9件が「ない」、大阪市西区は「わずか」と書いています。横浜市衛生研究所は判定に使っていません。
- 黒くてもシロアリです。 白いのは働きアリと兵隊アリだけです。
- 時期は種類と地域で変わります。 本州の4〜5月が、北海道では5月末〜7月にずれます。
- 飛ぶ日の天気は当てにしないでください。 「雨上がり」は5件で一致しますが、風については東京都と名古屋市が正反対のことを書いています。
- 殺虫剤をかける前に、数匹残すか写真を撮ってください。 横浜市のように虫を持ち込んで相談できる窓口があります。
- 自治体は駆除をしません。 90自治体中、案内ページを見つけられたのは26件。東京都は、シロアリは衛生害虫ではないと明記しています。
- 「お宅から羽アリが飛んでいる」と言って訪ねてくる手口が、自治体の注意喚起に載っています。 無料点検を口実にした訪問には応じない、が共通した助言です。
業者を選ぶ段階の話は、別の記事にまとめてあります。「5年保証」がどこから来た数字なのかを協会の仕様書まで遡って調べたものがシロアリ業者の「5年保証」は、どこから来たのか、費用の相場とされる数字の出どころを探したものがシロアリ駆除の費用に、公的な単価はありません、法律がどこまで義務づけているかを調べたものがシロアリ駆除に、国家資格はありませんです。
この記事の広告について
この記事の末尾には、シロアリ110番の広告リンクがあります。当サイトが提携しているサービスです。
提携しているからといって、この記事の内容は変えていません。 見分け方の11件は、提携先とは無関係に、協会と自治体の公表資料だけで突き合わせました。シロアリ110番は上の11件には含まれていません。
シロアリ110番について、当サイトが確認できたことと、できなかったことを書きます。
確認できたこと
- 運営はシェアリングテクノロジー株式会社(東証グロース上場、証券コード3989、法人番号2180001061708)です。
- 自社では施工しません。 加盟している業者を紹介するサービスです。
- 公式サイトの料金表示は、1㎡あたり1,320円(税込)、66㎡以下は一律88,000円(税込) となっています。
- 保証について、公式サイトに「加盟店による保証です。保証期間や保証内容は加盟店により異なる可能性がございます。」と明記されています。保証の主体は紹介元ではなく、実際に施工する加盟店です。
確認できなかったこと
- 加盟店の数。公式サイトで確認できませんでした。
- 個々の加盟店がどの業者になるか。依頼してみないと分かりません。
- 実際に依頼した人の評価。当サイトは依頼したことがないので、体験談は書けません。
上に書いたとおり、羽アリが本当にシロアリかどうかは、まず翅を見て、疑わしければ自治体の窓口に虫を持ち込むという順序が取れます。 業者に連絡するのはそのあとでも遅くありません。中野区が書いているように、アメリカカンザイシロアリに対応していない業者もあるので、種類が分かってから業者を探すほうが、話が早いはずです。
資料も、自治体のページも変わります。 この記事の内容は確認日時点のものです。現にこの記事を書いている最中、以前は分かりやすい説明を載せていた豊島区のページが削除されていることが分かりました。引用元のURLは1件ずつ付けてあるので、気になったものは直接開いて、今の記述をご自身で確かめてください。
