最初にお断りします。この記事は法的な助言ではありません。
当サイトが書けるのは、法令の条文と、自治体の公式ページから確認できたことだけです。すべて出典を付けるので、同じ手順で確かめられます。
この記事の末尾には広告リンクがあります(鳩110番)。 提携の有無で、調べた内容は変えていません。 条文も自治体の記述も、広告とは無関係です。
確認日:2026年9月30日
確認できたこと
- 卵もヒナもいない空の巣は、誰でも自由に撤去できます。 これは多くの自治体が明記しています
- 卵かヒナがいると、許可なく撤去できません。 条文は「採取又は損傷」を禁じています
- 待つ日数について、自治体の書き方が割れていました。 「約1か月」と書く自治体と、「卵は16〜18日でかえり、ヒナは約30日で巣立つ」と分解して書く自治体があります。分解したほうを足すと46〜48日です
- ドバトなら市が捕獲許可を取って卵や雛を処分する自治体があります。 ただし当サイトが43自治体で調べた範囲には1つもありませんでした
- 罰則は、現行の条文では一年以下の拘禁刑です。自治体ページには「懲役」のままの表記が残っています
まず、巣の中を見てください
話はここから分かれます。
| 巣の状態 | できること |
|---|---|
| 卵もヒナもいない | 誰でも、許可なく撤去できます |
| 卵かヒナがいる | 許可なく撤去できません |
表は横にスクロールできます。
武蔵野市が、この2つを見出しで分けて書いています。ページ全体が短く、この分け方だけでできています。
「巣はできたが、卵も雛もまだない状態」
ご自身で巣を撤去してしまって差し支えありません。
巣材は燃えるごみで出してください。
空なら、ごみとして出せます。
堺市も同じです。
空っぽの巣であれば撤去してもらっても構いません。撤去した巣はごみとして処分してください。巣の撤去は、原則その敷地の管理者が行います。
北九州市は、もっと短く書いています。
空(から)の巣は、どなたでも自由に撤去できます。
「どなたでも」。 ここに許可は要りません。
ただし、巣を見るときの注意があります。 大田区と世田谷区が同じ文で書いています。
また、巣を撤去する際は必ず手袋やマスクをつけて行うようにしましょう。
堺市はフンの扱いまで書いています。
ハトのふんは、まず水で流すか、流せない場合でも一度水に濡らして、飛散しないようにして、片付けるようにしてください。
法律が禁止しているのは「採取又は損傷」です
卵かヒナがいた場合の根拠は、鳥獣保護管理法です。 当サイトはe-Gov法令検索で現行条文を直接読みました。
第八条(鳥獣の捕獲等及び鳥類の卵の採取等の禁止)
鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。
ここは丁寧に読んでください。条文は「採取又は損傷」と定義しています。
持ち去ることだけではありません。傷つけることも禁止です。 巣ごと動かして卵が割れた、掃除のついでに落とした、という場合も、条文の文言からは「損傷」に当たりうると読めます。
「捨てなければセーフ」ではない、ということです。
第九条第一項(許可)
学術研究の目的、鳥獣の保護又は管理の目的その他環境省令で定める目的で鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をしようとする者は、次に掲げる場合にあっては環境大臣の、それ以外の場合にあっては都道府県知事の許可を受けなければならない。
原則は都道府県知事の許可です。ただし実際の窓口は自治体によって分かれます(後述)。
第八十三条第一項第一号(罰則)
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
同条第3項には、こうあります。
第一項第一号から第三号まで、第五号及び第六号の犯罪行為の用に供した物及びその犯罪行為によって捕獲した鳥獣又は採取した鳥類の卵であって、犯人の所有に係る物は、没収する。
「懲役」と書いてある自治体ページがあります
現行の条文は「拘禁刑」です。 ところが自治体のページには「懲役」のままの表記が残っています。
当サイトが43自治体で鳩を調べたとき、罰則の刑名を書いていたのは3自治体だけで、その全部が懲役のままでした。「拘禁刑」と書いている自治体は1つもありませんでした。練馬区のページは2026年8月19日更新です。
一方で、「拘禁刑」と書いている自治体もあります。 長岡京市(2025年7月25日)です。
違反した場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があります。
禁止されている行為の中身は、どちらの表記でも変わりません。 ただし、自治体ページの法律の記述は、法令そのもので確かめたほうがいいというのが当サイトの結論です。
なお、長岡京市のこのページに「ハト」「鳩」「ドバト」の語は1つも出てきません。 名前が挙がっているのはツバメだけで、上の文は野鳥一般についての記述です。鳩にも及ぶ書き方ですが、鳩について書かれたページではありません。
いつまで待つのか。自治体の答えが割れています
ここが、この記事でいちばん実用的なところだと思います。
「巣立つまで待ってください」と書く自治体は多いのですが、何日待つのかについて、書き方が2通りに分かれていました。
A:「約1か月」とだけ書く自治体
| 自治体 | 原文 |
|---|---|
| 中野区 | 「なお、巣立つまでは約1ヶ月ほどかかります。」 |
| 練馬区 | 「(ヒナが巣立つまでの期間は長くとも約1か月ほどです。)」 |
| 仙台市 | 「ヒナが巣立つまで通常1か月程度はかかりますが」 |
| 足立区 | 「ヒナが巣立つまでの約1か月間そのままにしておく」 |
表は横にスクロールできます。
B:卵の期間とヒナの期間を分けて書く自治体
| 自治体 | 原文 |
|---|---|
| 大阪市 | 「卵は16~18日でかえり、ヒナは約30日で巣立ちます。」 |
| 堺市 | 「卵は約16日から18日でかえり、ヒナは約30日で巣立ちます。」 |
| 横浜市 | 「孵化から巣立ちまでの期間は約30日から40日程度です。」 |
表は横にスクロールできます。
Bを足すと、大阪市と堺市は46日から48日です。 横浜市は孵化からの日数だけなので、卵の期間を大阪市の数字で補うと、産卵から46日から58日になります。
Aの「約1か月」は、どこから数えた1か月なのかが書かれていません。
卵を見つけた日から1か月と読むか、ヒナがかえった日から1か月と読むかで、2週間以上ずれます。 中野区の文は「卵を産んでしまってる場合、許可なく撤去することはできません。ヒナが巣立つまで待ってから、巣を除去するとよいでしょう。なお、巣立つまでは約1ヶ月ほどかかります。」という並びなので、卵の段階から数えているようにも読めます。
当サイトは、どちらが正しいかを断定しません。 鳩の繁殖の実際の日数は、当サイトが確認できる公的資料の範囲を超えます。
ただし、こうは言えます。 「約1か月」と書いてある自治体に住んでいても、大阪市と堺市が書いている「16〜18日+約30日」のほうが長いので、待つならそちらに合わせたほうが安全です。
もう1つ、比較のために書いておきます。 武蔵野市は鳥一般について、こう書いています。
鳥の種類によりますが、おおよそ、卵を温めている期間が12日程度、雛が生まれて巣立つまで14日程度かかります。
足すと26日です。 ただしこれは、冒頭で「鳥の種類によりますが」と断ったうえでの一般論で、鳩の数字ではありません。鳩について書かれた大阪市・堺市の数字(46〜48日)とは、倍近く違います。
待っている間は、繰り返します
そして、待っても終わりません。
中野区がドバトの繁殖をこう説明しています。
ここで言うハトとは、飼い主のいない野生のハトで、ドバトと呼ばれているものです。ドバトは1年中繁殖し、何度も産卵を繰り返しますが、特に春と秋に繁殖が盛んになります。また、生後6か月ほどで産卵が可能となります。
大阪市も同じ趣旨です。
群れで行動し、雨の降り込まない棚状の所にねぐらや巣を作ります。繁殖期は長く、早春から初冬まで何度も子育てをします。
巣立ちを待って巣を撤去しても、対策をしなければ同じ場所に戻ってきます。 新宿区がそう書いています。
巣を撤去しても、対策を講じなければ再度同じ場所に棲みついてしまう可能性が高いです。
だから複数の自治体が「巣を作られる前」を強調しています。 大阪市の書き方です。
巣を作り始めたらすぐに取り除いてください。
どうしても待てない場合
選択肢は2つです。どちらも許可が要ります。
1つめ。自分で許可を申請する。
申請先は自治体で分かれます。 当サイトが43自治体で確認したところ、こうなっていました。
- 市が許可を出す:札幌市・川崎市・相模原市・名古屋市・大阪市・広島市・北九州市・福岡市・熊本市
- 県が許可を出す:千葉市(千葉県)・浜松市(静岡県知事)・静岡市(静岡県中部農林事務所)
- 都に案内する:中野区・足立区
堺市は、手続きまで書いています。
捕獲申請者から状況をお聞きして、必要と判断される場合は、捕獲許可証を交付します。
「必要と判断される場合は」。 申請すれば必ず出るとは書かれていません。
2つめ。業者に頼む。
ただし、ここに注意があります。 大阪市は、申請と捕獲の関係をこう書いています。
だたし、捕獲許可申請については、その土地の所有者か管理者あるいは依頼を受けた業者が行い、申請者が捕獲することになります。
(「だたし」は原文のままです)
「申請者が捕獲することになります」。 つまり業者に頼む場合、その業者が申請者になって、その業者が捕獲するという形です。
当サイトが業者6社を調べたところ、自社が捕獲許可を取ると書いている会社は1社もありませんでした。 依頼する前に、この1問を聞いてください。 「巣の中に卵かヒナがあります。御社は許可を取って作業されますか」
市が代わりにやってくれる自治体もあります
当サイトが43自治体で調べた範囲には1つもありませんでしたが、範囲の外に例外があります。
武蔵野市です。
巣立つまで我慢できない場合、鳥の種類がドバトとカラスの場合のみ、市が捕獲許可を得たうえで卵や雛を駆除することができます(巣材の処分や清掃はご自身で行ってください)。それ以外の鳥の種類の場合は、市も駆除することができませんので、巣立つまでそっとしておいてあげてください。
「ドバトとカラスの場合のみ」。 ドバトはこの「のみ」の側に入っています。
当サイトが調べたのは東京23区と政令指定都市20市の43自治体で、武蔵野市は多摩地域なので入っていません。43でゼロだったことを、全国1,700以上の市区町村に広げることはできません。 お住まいの自治体のページを見てください。
ただし、武蔵野市も「巣材の処分や清掃はご自身で行ってください」と書いています。 全部やってくれるわけではありません。
ヒナが巣から落ちていたら
これは、拾わないでください。 複数の自治体が同じことを書いています。
堺市。
ヒナが巣から落ちた場合は、何もせずそのままにしておいてください。親鳥が近くにいますので、直接触らない方がいいです。
長岡京市は、もう少し詳しく書いています。
野鳥のヒナの多くは、卵から孵って羽毛が生えそろうとすぐに巣立とうとします。うまく飛べずに落ちるヒナもいますが、怪我をしていなければ、親鳥が給餌や誘導をするうちに次第に飛べるようになると考えられます。また、人間が近くにいると、親鳥が警戒してヒナの近くに来ることができません。自然の摂理に任せ、温かく見守ってあげてください。
ただし、長岡京市には例外も書かれています。
※羽毛が生えそろう前のヒナについては、巣立ち前に巣から落ちてしまった可能性があります。ビニール手袋等を着用のうえ、巣の中または巣の近くに戻してあげるようご協力をお願いします。
羽毛が生えそろっているかどうかで、対応が変わります。
練馬区も同じ趣旨です。
巣立ったばかりのヒナ(特に4月から6月)は、うまく飛ぶことができず、地面に落ちてしまうことがあります。親鳥はヒナと鳴き声でコミュニケーションをとっています。人間がいると親鳥はヒナに近づけないので、少し離れて見守りましょう。
次に巣を作らせないために
巣立ちを待つ間にできることがあります。 自治体が繰り返し書いている方法だけを挙げます。当サイトは効果を検証していません。
手すりにテグス(釣り糸)を張る。 これがいちばん多く出てきました。堺市は、マンションで釘が打てない場合の方法まで書いています。
マンション等で、ベランダの手すりに穴を開けたり釘を打ち付けたりできない場合は、割り箸を3本程度重ねた太さの木片(割り箸をボンドで貼り付けることでも可能)を手すりにくくりつけることにより、手すりの上方5~6センチメートルのところにテグスを張ってください。
なぜ手すりなのか。 大阪市が理由を書いています。
ドバトはベランダなどに降りるとき、いったん手すりなどにつかまり安全を確かめる習性があります。手すりにとまれないと降りることはできません。(広いベランダなどには直接降りる場合があります。)
括弧の中まで読んでください。 広いベランダには直接降りる場合がある、と書かれています。
フンをすぐ片付ける。 大阪市の説明です。
ドバトは糞のあるところが安全だと判断するようで、糞を放置するとますます集まってきます。
巣を作りそうな場所をふさぐ。 中野区の4つです。
ベランダの風通しをよくし、植木鉢などを置かない。
ベランダに設置してある洗濯機やエアコンの室外機などの隙間をふさぐ。
市販の木酢液やクレゾール石けんなどで消毒する。
全面をネットで覆う。
テグスには注意もあります。 中野区と足立区が同じことを書いています。
テグスに野鳥が絡まないよう、取り扱いに気を付けてください。
この記事が書けなかったこと
- 鳩の繁殖の実際の日数。 自治体の記述を並べただけです。どれが正しいかは判断できません
- 「損傷」がどこまで含まれるか。 条文の文言を示しただけで、個別の行為が違反にあたるかは当サイトには判断できません
- 許可が出るかどうか。 堺市は「必要と判断される場合は」と書いています。基準は公開されていません
- 許可の申請に何日かかるか。 どの自治体にも書かれていませんでした
- 業者が実際に許可を取っているか。 6社の比較記事に書いたとおり、公式サイトからは確認できませんでした
- ドバトとキジバトの見分け方。 自治体ページの多くは「ハト」としか書いていません。千葉市だけが2種を区別していました
