最初にお断りします。この記事は駆除のやり方を教えるものではありません。
当サイトが書けるのは、自治体と東京都の公式資料から確認できたことだけです。すべて出典を付けるので、同じ手順で確かめられます。
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確認日:2026年9月10日
確認できたこと
- 家ネズミ3種は、体長・尾・耳・糞の4点で絞り込めます。中野区が表にしています
- 尾が胴より長ければクマネズミ、短ければドブネズミかハツカネズミです
- 東京都は、種類の分かる相談の9割以上がクマネズミだと書いています
- 東京都の資料には、優占種がドブネズミからクマネズミに入れ替わった経緯が数字で残っています
- そのクマネズミは、殺そ剤感受性が低いと東京都が明記しています
- 中野区は、毒えさの有効成分を種類別に書き分けています。 ドブネズミにはワルファリン、クマネズミにはジフェチアロールです
- 一方で、殺そ剤を配っている区の多くは、配る薬の成分を書いていませんでした
まず、見分ける材料は4つです
中野区が、3種を1つの表にしています。当サイトが確認した自治体のページの中で、いちばん項目が揃っていました。
| ドブネズミ | クマネズミ | ハツカネズミ | |
|---|---|---|---|
| 大きさ(体長) | 22から26センチメートル | 15から20センチメートル | 6から9センチメートル |
| 特徴 | 耳が小さく、尾が胴より短い | 耳が大きく、尾が胴より長い | 耳が大きく、尾が胴より短い |
| 色(ただし、個体差あり) | 腹部は灰色、尾は白っぽい | 腹部は黄褐色、尾は黒い | 腹部は白い |
| ふんの形状 | 丸みがある。10から20ミリメートル | 散らばって、細長く不揃い。6から10ミリメートル | 4から6ミリメートル |
| 生息場所 | 下水管、下水溝、植込み、公園等の地面 | 壁の中、天井裏、ビル内部の高いところ | 畑に多い |
| 行動パターン | 主に水平(横)行動 | 主に立体的(縦)行動 警戒心が強い | 忍び込み |
表は横にスクロールできます。
(中野区の表の記載をそのまま並べています)
大きさは、あてになりません。 ドブネズミの22cmとクマネズミの20cmは、見た目でほとんど差がありません。若い個体ならさらに区別できません。
あてになるのは、尾です。
尾が胴より長ければ、クマネズミです
この1点だけで、かなり絞れます。
大阪市住吉区が、こう書いています。
クマネズミ:尾は体より長く、耳も大きい。ビル内など屋内に生息する。体長18cmから20cm。
ドブネズミはこうです。
ドブネズミ:尾は体よりやや短く、耳は倒しても目まで届かない。下水道など水気の多い所に生息する。体長20cmから26cm。
耳の見分け方が具体的です。 耳を倒して目まで届かなければドブネズミ、という書き方をしています。
東京都多摩府中保健所のパンフレットも、同じ2点を挙げています。
- クマネズミ:尾は胴長より長く、耳が大きい
- ドブネズミ:尾は胴長より短く、耳が小さい
姿を見たなら、尾と耳を見てください。 それだけで、天井裏にいるのがクマネズミかどうかが、かなりの確度で分かります。
ただし、これは姿を見た場合の話です。 屋根裏の音の記事に書いたとおり、音だけでは動物すら特定できません。 ネズミかハクビシンかも、音では決まりません。
姿を見ていないなら、糞が残っています
糞は、種類ごとに大きさと形が違います。 中野区の表を、糞だけ取り出します。
| 種類 | ふんの形状(中野区の記載) |
|---|---|
| ドブネズミ | 丸みがある。10から20ミリメートル |
| クマネズミ | 散らばって、細長く不揃い。6から10ミリメートル |
| ハツカネズミ | 4から6ミリメートル |
表は横にスクロールできます。
「散らばって、細長く不揃い」がクマネズミです。 ドブネズミは丸みがあって、ひとまわり大きくなります。
素手では触らないでください。 当サイトはネズミの記事に、東京都が挙げている病原体の一覧を載せました。写真を撮って、定規か硬貨を一緒に写してください。 大きさが分かります。
東京都は、痕跡を「ラットサイン」と呼んでいます
東京都ねずみ防除指針に、痕跡の種類が挙げられています。
ラットサインの種類は、音、齧り跡、糞、足跡、からだのこすり跡などである
こすり跡が、いちばん見落とされます。 同じ資料に、その正体が書かれています。
足跡やこすり跡は、ねずみの体から分泌される脂分と汚れが、ねずみの通り道に付着してできるもので、特有の黒光りした跡となる。
黒光りした帯が、壁や配管の脇に走っていたら、それが通り道です。 汚れに見えますが、汚れではありません。
そして侵入口は、思っているより小さくて済みます。 中野区の記載です。
ネズミは屋内と屋外を出入りする際に、1センチメートル程度の隙間や穴からでも、自由に出入りができます。
大阪市住吉区も同じことを書いています。
ねずみは、1センチメートルほどの穴や隙間を通り抜けることができます。
1cmです。 当サイトは屋根裏の音の記事で、東京都がハクビシンについて8cmの隙間に侵入可能と書いていることを紹介しました。1cmと8cm。 見つかった隙間の大きさは、絞り込みの材料になります。
ここからが本題です。相談の9割以上はクマネズミです
種類を確かめる価値は、雑学ではありません。
東京都保健医療局の「都民のためのねずみ防除読本」に、こう書かれています。
現在自治体が住民から受ける相談で、ねずみの種類が分かる相談のうち、9割以上がクマネズミによる被害です。
9割以上です。
同じ資料は、その理由も書いています。
ねずみの相談が多い理由のひとつは、東京の住宅地におけるねずみの優占種が、殺そ剤(毒えさ)や捕そ器(ねずみ捕り)で比較的たやすく駆除されるドブネズミから、駆除の難しいクマネズミに変化したことが考えられます。
東京都多摩府中保健所のパンフレットも、現場の実感として同じことを書いています。
当保健所には、毎年多くのねずみの相談が寄せられます。そのほとんどがクマネズミです。
つまり、天井裏で音がしていて、それがネズミなら、統計的にはクマネズミです。
東京都には、入れ替わりの記録が数字で残っています
これは他ではあまり読めない資料だと思うので、そのまま紹介します。
東京都保健医療局の同じ読本に、都内の捕獲調査の推移が載っています。
昭和30年に行った、都内のねずみ捕獲調査によると、捕獲されたねずみの種類構成は、ドブネズミ58%、クマネズミ41%であったが、昭和42年にはドブネズミ90%、クマネズミ10%とドブネズミが席巻する勢いであった。
昭和42年の時点では、9割がドブネズミでした。 今とちょうど逆です。
その後の変化も書かれています。
第2段階である1970年代になると、都心のビル街でドブネズミは漸減し、替わって再びクマネズミが優占するようになった。
さらに、住宅街への広がりについても記載があります。ただしこの部分は、東京都自身の断定ではなく、研究者の見解の紹介として書かれています。原文は次のとおりです。
さらに第3段階である90年代に入ると、ビル街だけでなく住宅街にまでクマネズミの分布域が拡大する兆候が見え始めたと述べている。
文末が「と述べている」です。 出典の扱いとして、そこは正確に書いておきます。
それでも、90年代から現在までの流れは一本の線でつながります。 ビル街から住宅街へ、ドブネズミからクマネズミへ。そして今、相談の9割以上がクマネズミです。
そのクマネズミに、毒えさが効きにくいです
ここが、この記事でいちばん大事なところです。
東京都多摩府中保健所のパンフレットは、クマネズミとドブネズミを項目ごとに並べています。殺そ剤感受性という項目があります。
| 項目 | クマネズミ | ドブネズミ |
|---|---|---|
| 殺そ剤感受性 | 低い(毒えさの効き目が薄い) | 高い(毒えさの効き目が高い) |
| 警戒心 | 非常に強い(わなにかかりにくい) | 低い(わなにかかりやすい) |
表は横にスクロールできます。
(多摩府中保健所の記載を表に整理しました。矢印つきの補足は括弧に置き換えています)
同じパンフレットは、はっきりこう書いています。
警戒心が強く賢いクマネズミには、毒えさやトラップはあまり効果がありません。
東京都ねずみ防除指針の3種比較表も、クマネズミの「警戒」の欄にこう書いています。
非常に強い。殺そ剤に対して感受性はあまり高くない。
ドブネズミの同じ欄はこうです。
あまり強くない。殺そ剤に対して感受性が高い。
そして、殺そ剤を配っている区自身が、同じことを書いています。 墨田区のページです。
薬剤による防除は、天井裏や床下などで死ぬことがあります。また、クマネズミはなかなか薬剤を食べないので工夫が必要です。(生活衛生課で殺そ剤をおわけするとともに、殺そ剤の使い方のチラシを配布しています。)
1つの段落の中で、「クマネズミはなかなか薬剤を食べない」と「殺そ剤をおわけする」が並んでいます。
当サイトは、これを矛盾だとは考えていません。 区は効かないとは書いていません。工夫が必要だと書いています。 ただ、もらう側がそれを読まずに持ち帰ると、期待した結果にならないことは起こりえます。
なぜ効きにくいのか。東京都が理由を書いています
薬の側の事情があります。 東京都保健医療局の資料に、こうあります。
現在、わが国においては、クマネズミに対して有効な殺そ剤の開発が行われにくい状況にある。それは、薬事法による殺そ剤の許認可が容易でないことや、マーケットサイズ等の問題に加え、これまでの効力試験が主としてドブネズミに対して行われ、クマネズミによる検討が僅かしかされていなかった等の理由が推察される。
効力試験が、主としてドブネズミに対して行われてきた。 東京都はそう書いています。
同じ段落は、こう続きます。
欧米ではクマネズミに有効な製品が既に販売されており、また、最近になってようやくわが国においてもクマネズミに有効な新薬開発の動きが出てきている。今後は、クマネズミの殺そ剤抵抗性対策の一つとしても、すみやかなる新薬開発が望まれる。
「クマネズミの殺そ剤抵抗性」という言葉が、東京都の資料に出てきます。
当サイトは、ここから先を書けません。 どの製品がどの程度効くのか、抵抗性がどれくらい広がっているのかは、公開資料から確認できませんでした。 推測では書きません。
中野区は、薬の成分を種類別に書き分けています
これは、当サイトが調べた中で唯一の書き方でした。
中野区の表には、捕獲方法と毒餌の成分が種類ごとに入っています。
| ドブネズミ | クマネズミ | ハツカネズミ | |
|---|---|---|---|
| 室内での捕獲方法(わな) | かごわな | 粘着シート | 粘着シート、かごわな |
| 室内での捕獲方法(毒餌) | ワルファリン | ジフェチアロール | ジフェチアロール |
表は横にスクロールできます。
同じページに、理由もそのまま書かれています。
毒餌では有効成分がジフェチアロールを含むものがお勧め。クマネズミでは、ワルファリンは効かないことがある。
「クマネズミでは、ワルファリンは効かないことがある」と、区の公式ページに書いてあります。
薬の分類そのものは、他の区にも記載があります。練馬区です。
殺そ剤には、急性毒性(リン化亜鉛など)と抗凝血性(ワルファリン、ジフェチアロールなど)のものがあります。
荒川区も分類を書いています。
薬剤(殺そ剤)には慢性毒性殺そ剤(クマリン系)と急性毒性殺そ剤(シリロシド、リン化亜鉛、ジフェチアロール等)がある
そこで、当サイトが調べたことがあります
殺そ剤を配っている区は、配る薬の成分を書いているのか。
当サイトが8区の公式ページを確認したところ、配る薬そのものの成分は、どの区にも書かれていませんでした。
| 自治体 | 配布 | 配る薬の有効成分の記載 |
|---|---|---|
| 千代田区 | 殺鼠剤・粘着シート | 記載を確認できませんでした |
| 新宿区 | 殺そ剤のサンプル | 記載を確認できませんでした |
| 墨田区 | 殺そ剤 | 記載を確認できませんでした |
| 江東区 | 殺そ剤 | 記載を確認できませんでした |
| 葛飾区 | 殺そ剤・かご | 記載を確認できませんでした |
| 荒川区 | 殺そ剤 | 薬剤の分類の記載はあります |
| 練馬区 | 殺そ剤・粘着板 | 薬剤の分類の記載はあります |
| 中野区 | 粘着シート・毒餌 | 種類別の推奨成分の記載があります |
表は横にスクロールできます。
荒川区・練馬区・中野区の3区にも、「区が配っているのはこの成分です」と書いた一文はありませんでした。 書かれているのは、一般的な分類や、選び方の助言です。
これは、区を責める話ではありません。 配る製品はその年の調達で変わりますし、ページに書けば古くなります。
ただ、受け取る側からすると、次の一言を聞く価値があります。
これはワルファリンですか、ジフェチアロールですか。
中野区の記載に従うなら、クマネズミが相手のとき、この答えで結果が変わる可能性があります。 そして東京都が書くとおり、相談の9割以上はクマネズミです。
窓口で聞けば、その場で分かります。
区によって、言っていることが違う点もあります
正直に書いておきます。
粘着シートの評価が、2つの区で食い違っています。
中野区は、クマネズミの室内での捕獲方法として粘着シートを挙げています。
一方、千代田区はクマネズミの性格をこう書いています。
臆病、警戒心が強い、殺そ剤・粘着シートを非常に警戒
千代田区のドブネズミの欄はこうです。
どう猛、警戒心が弱め、殺そ剤が効きやすい
中野区は粘着シートを推し、千代田区は粘着シートを非常に警戒すると書いています。
当サイトは、どちらが正しいかを判定できません。 設置の仕方や枚数で結果が変わるのかもしれませんし、書いている観点が違うのかもしれません。確認できていないことは、確認できていないと書きます。
言えるのは、クマネズミは道具を選ぶ相手だ、という点で2区が一致していることまでです。
この記事が書けなかったこと
- 殺そ剤や粘着シートの使い方。 当サイトは実行して確かめていないので書きません
- どの製品が効くか。 商品名は書きません。成分の話は、自治体の記載の紹介にとどめています
- クマネズミの殺そ剤抵抗性が、どれくらい広がっているか。 東京都は「抵抗性対策」という言葉を使っていますが、範囲を示す公開資料を確認できませんでした
- 糞や姿から種類を確実に断定する方法。 大きさには個体差があると中野区自身が但し書きを付けています
- 家ネズミ3種以外のネズミ。 野ネズミは家ネズミではなく、法律の扱いも違います
- 東京都以外の地域で、クマネズミが9割を占めるかどうか。 引用した資料は東京都のものです
見分けるときに、やっておくこと
- 姿を見たら、尾を見る。 胴より長ければクマネズミです
- 耳を見る。 倒して目まで届かなければドブネズミ、という書き方を住吉区がしています
- 糞を撮る。 素手で触らず、定規か硬貨を一緒に写す
- 黒光りした帯を探す。 それが通り道です
- 隙間の大きさを測る。 1cmあれば入ります
- 自治体で殺そ剤をもらうなら、成分を聞く。 中野区は種類別に書き分けています
- 記録を残す。 自治体の制度を使うときにも、業者に見せるときにも効きます
