最初にお断りします。当サイトはシロアリ駆除を依頼したことがありません。
ですから「いくらだった」という体験談は書けません。書けるのは、公的機関と事業者が公表している数字だけです。すべて出典を付けるので、同じ手順で確かめられます。
この記事に広告リンクはありません。 当サイトで広告リンクを載せているのは、提携している会社とサービスのページだけです(駆除ザウルス・ハウスプロテクトの2社と、ハチ110番、シロアリ110番)。提携の有無で、調べる内容は変えていません。
確認日:2026年9月17日
確認できたこと
- 国の積算基準に、防蟻処理の単価は見つけられませんでした。 仕様書には「3節 防腐・防蟻処理」がありますが、金額の記載はありません
- 業者サイトがよく引く「1坪当たり10,725円」は、経済調査会の一次資料で確認できませんでした
- 経済調査会が現に公表している数字は別のものでした。㎡あたり2,420円〜3,100円(税別)、工法によっては15,000円
- しかもその「公表価格」は、実勢価格ではないと定義されています
- 行政が実際に発注した例を1件だけ見つけました。 保育園のシロアリ防除で496,800円(平成27年度)
- 東京都が処分した事業者の平均契約額は約219万円、最高約720万円でした
- 国民生活センターは、害虫駆除の統計から「シロアリ駆除サービスの件数は除いて集計している」と明記しています
- 個人住宅のシロアリ駆除に補助金を出す自治体は、確認できませんでした。 むしろ対象外と明記する自治体が複数あります
国の積算基準を探しました
公共工事には、国が決めた単価や歩掛があります。 当サイトはネズミ駆除の相場の記事で、国土交通省の積算要領に「ねずみ等の防除」の単価がないことを確認しました。シロアリでも同じ手順を踏みました。
確認したのは、公共建築工事積算基準(最終改定 平成28年12月20日)、公共建築工事標準単価積算基準(最終改定 令和8年3月11日)、建築保全業務積算基準・同要領(令和5年)です。
防蟻・白蟻・しろありの単価は、読み取れた範囲では見つかりませんでした。
ただし、ここは正直に限界を書きます。 標準単価積算基準の第2編は第1節から第22節まであり、第12節が「木」です。 この節の本文まで到達できませんでした。「単価は存在しない」と断定はできません。 確認できたのは「第1節から第8節までには無い」ことと、工事費の構成を定める積算基準には無いことです。
一方で、仕様は明確に定められています。 国土交通省の「公共建築木造工事標準仕様書」(令和7年版)には、複数の章に「3節 防腐・防蟻処理」が置かれています。
つまり、国は「どう施工するか」は決めているが、「いくらか」は決めていない——少なくとも公開資料からはそう読めます。
「1坪10,725円」を追いました
シロアリの費用を調べると、ある数字が繰り返し出てきます。
業界最大手のアサンテのコラムに、こう書かれています。
一般財団法人「経済調査会」が発表している統計によれば、シロアリ駆除・予防にかかる費用の目安は、1坪当たり10,725円(1㎡あたり3,250円)が相場とされています。
この記述には、いつの統計かが書かれていません。 調査年も発表年も、ページの更新日もありません。
そこで、経済調査会の側を調べました。
結果です。「1坪当たり10,725円」という数字は、経済調査会の一次資料では確認できませんでした。
代わりに見つかったのは、別の数字です。経済調査会の『積算資料公表価格版2026年9月号』(p.368)に「しろあり防除工事」が掲載されています。
| 工法 | 規格 | 公表価格(税別) |
|---|---|---|
| 発泡施工法 | 新築住宅 | 2,420円/㎡ |
| 発泡施工法 | 既存住宅 | 3,100円/㎡ |
| 土壌への防蟻・防湿皮膜形成工法(水性アクリル樹脂) | — | 15,000円/㎡ |
表は横にスクロールできます。
掲載しているメーカーは株式会社アグリマートです。
業者サイトの「3,250円/㎡」と、経済調査会の現行の公表価格「3,100円/㎡(既存住宅)」は、一致しません。
そしてもう一つ、この「公表価格」が何なのかが重要です。 経済調査会は定義を書いています。
本サイトで提供する"公表価格"は、実勢価格の市場が形成されておらず実取引の価格を把握することが困難な資機材・工法や、新製品のため使用実績が少ない資機材・工法等の価格です。
「実勢価格の市場が形成されておらず」。 つまりこれはメーカーが公表する参考価格であって、取引の相場ではありません。 経済調査会自身が「参考価格としてのご利用」を求めています。
税の扱いも明記されています。
また、掲載価格は"消費税抜き"で表示しています。
当サイトは、アサンテの記述が誤りだと言っているのではありません。 別の年の別の資料に、その数字があるのかもしれません。確認できたのは、「1坪10,725円」を経済調査会の一次資料で見つけられなかったこと、そして現行の公表価格は別の数字であることです。
国が持っている、もう1つの数字
国土交通省の「リフォームの内容と価格について」という資料に、シロアリの行があります。
●シロアリ防止処理(戸建て) 15-30
ただし、この数字は2つの点で慎重に扱う必要があります。
1つ目は単位です。 同じ表の他の行(スレート屋根の塗り替え 20-80、太陽光発電システム 200-300)から「万円」と読むのが自然ですが、シロアリの行そのものに単位の表記がなく、表のどこに単位が示されているかを特定できませんでした。
2つ目は出どころです。 資料に注記があります。
※調査方法:本資料は、工務店・リフォーム会社・量販店等約40社に対するアンケート及びヒアリング調査に基づき作成したもの。
約40社へのアンケートです。 積算基準のような公定単価ではありません。そして、この資料の作成年月が記載されていません。 いつの調査かが分からない数字です。
行政が実際に払った額
相場が分からないなら、行政がいくらで発注しているかを見る。 これはネズミの記事で使った手です。同じことをしました。
見つかったのは1件だけです。
京都府木津川市の「平成27年度随意契約結果(保健福祉部)」に、こうあります。
- 契約の名称:木津保育園シロアリ防除設備設置委託業務 27-子委-8
- 契約金額:496,800円
- 予定価格:496,800円
- 工期又は履行等期限:平成27年4月1日~平成27年4月30日
- 契約の相手方:有限会社アスカ ダスキンターミニックス奈良北店
予定価格と契約金額が同額で、随意契約です(地方自治法施行令第167条の2第1項第2号)。税込か税抜かは文書に注記がなく、確認できませんでした。
なぜ1件だけなのか。 自治体の入札結果は検索フォームの中にあり、外から個別案件に到達できないものが大半です。「1件しか無い」のではなく「1件しか見つけられなかった」という意味です。
事業者が公開している単価
当サイトが業者を調べた記事で確認した、実在の単価です。
| 事業者 | 公開している価格 |
|---|---|
| シロアリ110番 | 1㎡あたり 1,320円(税込)/66㎡以下は一律88,000円(税込) |
| アサンテ | エコ割り安心プランの施工単価 1平方メートルあたり1,467円(税込)(東京都・75㎡の場合) |
| テコラ | 1階床面積の坪数で定額(Sプラン95,700円〜XLプラン231,000円、税込) |
表は横にスクロールできます。
経済調査会の公表価格(税別2,420円〜3,100円/㎡)より、事業者の公開単価のほうが安く出ています。 ただし工法が違い、含まれる作業も違うので、同じものの比較ではありません。単価だけを並べて安い高いを言うことはできません。
トラブルになった金額
「相場」より確かな数字があります。行政処分と相談事例に出てくる、実際に払われた金額です。
東京都が令和3年に業務停止命令を出した事業者の数字です。前の記事で扱った、シロアリの無料点検を口実にしていた事業者です。
- 相談件数:令和元年度2件/令和2年度7件/令和3年度5件の合計14件
- 平均年齢:約71歳(43~96歳)
- 平均契約額 約219万円(最高約720万円)
勧誘の文言は、床下から始まっていました。
床下に湿気があるので、調湿材を全体に撒く必要がある。
国民生活センターの見守り新鮮情報 第338号(2019年5月28日)には、こういう事例が載っています。
「お宅から羽アリが飛んできているとクレームが出ているので点検に来た」と業者が来訪してきた。しつこく何度もシロアリ駆除を勧められ、一人住まいで怖いので帰ってもらうために契約した。作業前に代金を支払うよう言われて現金で約50万円支払った。(70歳代女性)
自治体の相談事例にも、金額が出ています。
大阪府八尾市(令和7年3月21日更新)。
シロアリ防除工事を80万円で勧められて承諾すると、「雨漏りの跡があります。外壁工事も同時に行いましょう」と勧誘されました。
合計850万円と高額だったが、他社と比較せずに契約した。
さらに解約を申し出たあとの話が続きます。
2割(170万円)は高額ではないだろうか。
茨城県(2026年8月20日更新)は床下換気扇の事例です。
このままでは湿気で家がダメになると言われ、145万円の床下換気扇工事を翌日行い代金を全額現金で支払った。
愛知県(令和6年3月)の事例は、値引きの形をとっています。相談者は83歳でした。
すぐシロアリ駆除しないと、大変なことになる。いつもは30万円だけど、今なら特別に10万円でいい。
「いつもは30万円」という金額に、根拠はありません。 この事例は、床下の写真を見せられて即日10万円を支払い、のちにクーリング・オフで返金されています。
80万円、145万円、219万円、850万円。 事業者が公開している単価(㎡1,320円〜1,467円)から計算される金額とは、桁が違います。
シロアリだけ、統計がありません
「シロアリ駆除の相談は年に何件あるのか」を調べようとして、行き止まりになりました。
国民生活センターが2024年4月24日に公表した「ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意」には、注記があります。
シロアリ駆除サービスの件数は除いて集計している
害虫・害獣駆除の統計から、シロアリは外されています。 理由は書かれていません。
訪問販売によるリフォーム工事の統計はあります。国民生活センターによれば、2022年度の平均は約132万円です。ただしこれはリフォーム全体の数字で、シロアリだけの平均ではありません。
シロアリ・床下工事に限定した相談件数や平均契約額を、公表資料で見つけることはできませんでした。
補助金は、むしろ「対象外」でした
「シロアリ 補助金」で検索されているので、調べました。
個人住宅のシロアリ駆除に補助金を出している自治体は、確認できませんでした。
見つかったのは逆の記述です。住宅の補助金制度で、シロアリ駆除を明示的に対象外にしている自治体が複数ありました。
| 自治体 | 制度 | 対象外の記述 |
|---|---|---|
| 幸手市 | 住宅リフォーム資金補助 | 「単にシロアリ駆除等を目的としたもの」 |
| 筑後市 | 住宅小規模改修事業補助金 | 「シロアリ等の害虫駆除」 |
| 大津市 | 定住促進リフォーム補助金 | 「シロアリ駆除等の消毒・薬剤散布」 |
| 静岡市 | 移住者住宅確保応援補助金 | 「ハウスクリーニング、シロアリ駆除に要する経費」 |
表は横にスクロールできます。
(大津市と静岡市は移住・定住を促す制度で、幸手市・筑後市のリフォーム補助とは性格が違います。並べていますが、同じ制度ではありません。)
リフォームの補助は「住宅の性能や価値を上げる工事」を対象にする設計になっていて、駆除や清掃はそこから外れる——という扱いに見えます。当サイトは自治体の意図を推測しません。確認できたのは、この4市が対象外と明記していることです。
なお、個人住宅ではありませんが、福井県坂井市が平成25年度の事務事業評価シートで、行政区の集会施設について「③シロアリの防除及び駆除を補助対象としました。」と書いています。現在も続いているかは確認できませんでした。
この記事が書けなかったこと
- 相場。 公的な単価が見つからず、業者サイトの数字は一次資料で確認できませんでした。当サイトは相場を書けません
- 公共建築工事標準単価積算基準 第2編第12節「木」の中身。 資料が長く、この節の本文に到達できませんでした。防蟻の歩掛が「無い」とは断定できません
- 行政の発注額の相場。 見つかったのは1件だけです
- シロアリ・床下工事に限定した相談件数と平均契約額
- シロアリ被害の修繕費用。 公的機関の数字を見つけられませんでした
- 国土交通省のリフォーム資料の作成年月と、「15-30」の単位
- 経済調査会の「積算資料」全体。 冊子の全項目を確認したわけではありません。別の号や別の資料に、業者が引く数字があるかもしれません
