最初にお断りします。この記事は駆除のやり方を教えるものではありません。
当サイトはシロアリの駆除をしていません。薬剤も試していません。 書けるのは、法令と公的機関の資料から確認できたことだけです。すべて出典を付けるので、同じ手順で確かめられます。
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確認日:2026年9月17日
確認できたこと
- 建築基準法は、しろあり対策を無条件には義務づけていません。 施行令49条2項で、防腐措置は「講じなければならない」、しろあり措置は「必要に応じて」です
- 床下の換気孔を定めた条文に、「しろあり」の語は出てきません。 施行令22条2号が防ぐ対象はねずみです
- シロアリ防除剤は、農薬取締法の対象でも薬機法の対象でもありません(NITE)
- 製剤を審査する法律がないと、業界団体自身が書いています
- 「しろあり防除施工士」は国家資格ではありません。 協会が昭和39年に創設した民間資格です
- 戸建住宅のシロアリ防除を業として行うのに、法律上必要な資格・許可は確認できませんでした
- 東京都が、シロアリの無料点検を口実にした業者に6か月の業務停止命令を出しています(令和3年)
- クーリング・オフの起算点は「受け取った日を含む」8日です(大阪府)
- 国の基準は北海道・青森県を防蟻の対象外にしていますが、森林総合研究所は2016年に「名寄市まで」と報告しています
法律が義務づけているのは、防腐までです
シロアリ対策は法律で決まっている——と思われがちですが、条文はそう書いていません。
建築基準法施行令第49条第2項(外壁内部等の防腐措置等)です。
構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から一メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。
読点の位置に注目してください。
- 防腐措置 → 「有効な防腐措置を講ずるとともに」。条件はありません
- しろあり措置 → 「必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を」
「必要に応じて」がかかっているのは、しろありのほうだけです。 防腐は無条件の義務で、しろありは条件付き。全国一律の防蟻義務は、法令上は存在しません。
もう一つ、床下の話です。施行令第22条(居室の床の高さ及び防湿方法)の第2号は、こう書いています。
外壁の床下部分には、壁の長さ五メートル以下ごとに、面積三百平方センチメートル以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入を防ぐための設備をすること。
この条文に「しろあり」は出てきません。 床下換気の目的は防湿とねずみの侵入防止です。換気がシロアリ対策として働くとしても、それは条文の趣旨ではありません。
当サイトのネズミの記事で、家ネズミが鳥獣保護管理法の適用除外であることを書きました。ねずみは床下の条文に名指しで出てきて、しろありは「必要に応じて」。 法令が動物をどう扱っているかは、条文ごとに違います。
薬剤を審査する法律が、ありません
ここが、この記事でいちばん確認する価値があった部分です。
シロアリの防除剤は、何の法律で規制されているのか。農薬取締法ではありません。
製品評価技術基盤機構(NITE)の冊子「身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ 家庭用防除剤」に、理由が書かれています。
農作物以外に対して使われる薬剤はこの法律の上では農薬ではありません。そのため、この冊子の家庭用防除剤は、農薬取締法の対象にはなりません。
農薬取締法の「農薬」は、農作物等を害する生き物の防除に使う薬剤です。 住宅の柱を守る薬剤は、農作物の防除ではないので、この定義に当てはまりません。
では薬機法(医薬品医療機器等法)はどうか。ここは分けて理解する必要があります。
同じ冊子は、蚊・ハエ・ゴキブリなどの衛生害虫用は医薬品・医薬部外品として薬機法の対象になる一方、木材害虫用は対象外としています。表には「建築害虫 シロアリ、キクイムシなど」と挙げられています。
つまり、蚊取り線香には薬機法がかかり、シロアリ防除剤にはかからない、ということです。
そして、業界団体自身がこう書いています。公益社団法人日本しろあり対策協会の「薬剤認定の流れ」です。
防蟻・防腐剤の有効成分は「化学物質審査および製造等の規制に関する法律」の規制下にありますが、その製剤は規制の対象とされていません
(このページの法律名の表記は、正式名称の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」とは異なります。協会のページの表記のまま引用しています。)
続きです。
従って、防蟻・防腐剤は製造者、使用者の自主的な判断に基づいて製造・販売・使用されています。本会ではそれらの薬剤について効力、安全性などの適格性を評価することによって認定を行い、消費者や作業者が安心して使用できる薬剤の普及に努めています。
「製造者、使用者の自主的な判断に基づいて」。 有効成分は化審法の規制下にありますが、製剤そのものを事前に審査・承認する法律がない。その空白を、協会の自主認定が埋めている——という構造です。
協会は審査の体制も公開しています。
この審査結果に基づき本会の学識経験者で構成される薬剤等認定委員会で、効力・安全性・環境への負荷・使用法・使用後の廃棄方法等を総合的に審査し認定しています。
当サイトは、この制度の良し悪しを判定しません。 確認できたのは、これが法律にもとづく制度ではなく、民間の自主制度であるということです。
「しろあり防除施工士」は民間資格です
資格の話も、同じ構造でした。
公益社団法人日本しろあり対策協会のページです。
当協会は昭和39年にシロアリの防除施工を行う技術者の資格制度として「しろあり防除施工士」制度を創設し、毎年多くの有資格者を輩出してきました。
「当協会は……制度を創設し」。 国が作った資格ではありません。協会が昭和39年に自ら創設した民間資格です。協会のページに、法的な根拠を示す記述は見つけられませんでした。
まぎらわしい制度が別にあります。建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)にもとづく「建築物ねずみ昆虫等防除業」の都道府県知事登録です。こちらは法律にもとづく制度ですが、対象は特定建築物(ビル等)の衛生管理で、戸建住宅のシロアリ防除に必要な登録ではありません。
調べた範囲では、戸建住宅のシロアリ防除を業として行うのに、法律上必要な資格・免許・許可は確認できませんでした。
当サイトは業者の比較記事で、害獣駆除4社の資格・登録を調べました。あのとき調べた「一級建築士事務所登録」や「わな猟免状」は、法律にもとづく登録・免許です。 シロアリには、それに当たるものが見当たりません。
だから、点検商法が成立します
資格も薬剤の審査もない。しかも床下は、住んでいる人が自分で見られません。
東京都が令和3年10月26日に公表した行政処分を読むと、この組み合わせが何を生むかが分かります。見出しがそのまま手口です。
「シロアリの無料点検に伺います」などと無料点検を口実に訪問し、リフォーム工事を勧誘する事業者に6か月の業務停止命令
処分を受けたのは株式会社西武住建(神奈川県横浜市南区、代表取締役 志田健太、設立 平成29年12月11日、資本金10万円)。令和3年10月27日から令和4年4月26日までの6か月間、訪問販売に関する業務の一部停止命令です。代表者個人に対する業務禁止命令も同時に出ています。
認定された勧誘の文言が、公表資料に載っています。
シロアリの無料点検に伺います。
これが訪問の口実です。そして床下に入ったあと、こう告げていました。
床下の梁や土台を支える柱がひび割れしている。このまま放置しておくと、大きな地震でもあれば倒れたりする危険性があります。
断られたあとの文言も認定されています。
このままにしておくと、家は壊れますよ。
都はこれを「事実と異なることを告げた」(不実告知)と認定しています。 ほかに、勧誘目的を明示せずに訪問を約束したこと、クーリング・オフの返金を不当に遅らせたこと、消費者の意に反して金融機関に連行して支払わせたことも認定されています。
「無料点検」は、点検が目的ではありません。 福岡県の消費生活センターは、こう書いています。
無料点検は、あくまで点検後のセールスが目的です。必要なければ、安易に点検を依頼しないようにしましょう。
契約してしまった場合
訪問販売なら、クーリング・オフができます。
大阪府の消費者向けFAQに、シロアリ駆除そのものの事例があります。質問は「床下点検に来た」という訪問販売業者に「床下にシロアリがいる」と言われて駆除処理をした、というものです。回答です。
法に定める契約書面または申込書面を受け取った日を含む8日以内であれば、クーリング・オフすることができます。
「受け取った日を含む」——初日を数に入れます。契約した翌日からではありません。
そして、もう一つ重要な部分が続きます。
また、法に定める契約書面を受け取っていない場合は、いつでもクーリング・オフすることができます。
書面をもらっていなければ、8日を過ぎていても期限は始まっていません。
自治体の注意喚起には「契約から8日以内」と書いているものもあります(茨城県筑西市)。法と国・府県の説明は「書面を受け取った日から」です。 自分の場合にどちらから数えるかは、契約書面の交付日で確認してください。
制度と、研究の報告がずれています
もう1つ、確認していて気づいたことがあります。
住宅金融支援機構の【フラット35】耐久性基準は、木部の措置についてこう書いています。
次のアの箇所について、次のイの防腐・防蟻(北海道・青森県は防腐)措置を講じます。
北海道と青森県は「防腐」だけでよい、という扱いです。地盤についても省略規定があります。
ただし、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県又は福井県においては、地盤の防蟻措置を省略することができます。
(省略できるのは「地盤の」防蟻措置です。木部の防腐・防蟻措置の省略ではありません。ここは別の規定なので混同しないでください。)
一方、森林総合研究所の大村和香子・神原広平・加藤英雄による報告(平成28年版 研究成果選集)は、こう書いています。
ヤマトシロアリの野外分布北限は2001年の段階では図1のように札幌市付近が北限でしたが、今回、野外生息域と被害情報を改めて精査した結果、図2のように北海道北部(名寄市)まで生息地を拡げている状況を明らかにしました。
制度は北海道を防蟻の対象外に置き、研究は北海道北部までの生息を報告しています。
当サイトは、どちらが正しいかを判定しません。 基準は融資の要件であって生息調査ではなく、研究の報告がただちに基準に反映されるわけでもありません。ずれているという事実だけ、書いておきます。 寒冷地にお住まいで気になる場合は、この報告の存在を知ったうえで判断してください。
見つけられる時期があります
シロアリは、羽アリが飛ぶときにだけ、目に見える形で現れます。
長野県林業総合センターの資料です。
ヤマトシロアリの場合、4-5月頃の雨上がりの暖かい晴天日の午前10-12時頃、群飛して新しい群体を形成します。
続けて、こう書かれています。
この群飛の時期がシロアリ発見の絶好のチャンスになります。
もう1種、イエシロアリは時期が違います。国立環境研究所の侵入生物データベースです。
6~7月に有翅虫による群飛行動が見られる。
ヤマトシロアリは4〜5月の昼、イエシロアリは6〜7月。 同じ「羽アリ」でも、出る時期が違います。
なお、イエシロアリは国立環境研究所のデータベースで外来種として扱われています。「世界の侵略的外来種ワースト100」と「日本の侵略的外来種ワースト100」の両方に記載があります。原産地は大陸中国・香港とされています。
この記事が書けなかったこと
- 駆除の料金相場。 当サイトは依頼していないので金額を書けません
- どの薬剤が効くか。 試していないので書けません
- 自分で駆除する方法。 実行して確かめていないので書きません
- シロアリがいるかどうかの判定。 床下を見ずに判断する方法を、当サイトは知りません
- 業者の比較。 シロアリの業者はまだ1社も調べていません。害獣の4社は調べましたが、シロアリ対応の有無は別途確認が必要です
- 相談件数の統計。 国民生活センターは「点検商法」全体の件数(2025年度19,696件)を公表していますが、シロアリ単独の件数は公表資料で確認できませんでした
- 国(消費者庁)によるシロアリ業者への処分。 執行事例を調べましたが、商品・役務に「しろあり」と明記された処分は確認できませんでした。確認できたのは東京都の1件です
